施設で介護士をやっていると、勤務形態に夜勤業務が入ってきます。
施設によって様々ですが、夜勤で看護師も常駐しているところもあれば、介護士のみのメンバーで対応になっていて、何かあればオンコールっていうところもあります。
オンコールってのは何か?
介護施設の文脈で言うと、自宅待機している日中の看護師が、利用者の急変時に連絡の取れる状態になっていることです。
利用者の体調不良時に、介護士は自宅待機の看護師に、電話で指示をあおぎます。
場合によっては、看護師が出勤してくるパターンもありますね。(僕のところでは一回もなかったですが)
看護師が、一緒に夜勤に入っている施設であれば、ある程度まかせられるところではありますが、看護師が夜勤に入っていない勤務形態の施設も多いです。
その場合、救急搬送までの対応を、現場の介護士のみで繋げる必要があります。
そこで、今回は、介護士が把握しておきたいポイントを記事にしていきます。
救急搬送時に隊員に聞かれること
ぼくは今まで、有料老人ホームと、特別養護老人ホームと、併せて、5回救急車に乗りました。
未だに、救急車は乗り慣れないですね。乗ってるだけで疲れる。
当然だけど、一刻を争う緊急事態なので、救急隊員の態度も殺伐としています。
山口もえみたいな人が救急車から出てきて、「こんばんわ〜。お助けしま〜す。うふふ」なんて人は、1人もいないわけで。
救急隊員に聞かれたことに対して、すぐに返答できるようにしておく必要があります。
以下は、ぼくが聞かれたことのある質問です。
救急隊員が到着してから現場で聞かれたこと
- 発見した時の状況と利用者の状態
- 救急隊員が到着するまでの対応はどうしたのか?
- (心肺停止の場合)AEDは使ったか?どんな反応をしたか?
- (サチュレーション低下の場合)COPDはあるのか?
- 家族連絡は取れているのか?
- 状態次第では搬送後に病院でカテーテル(管)を入れてもいいのか?等の家族希望の確認
救急車に乗ってから聞かれたこと
- 利用者の名前・性別・年齢
- 生年月日と住所
- 普段のADLと昨日・今日の様子
- 利用者の既往歴
- かかりつけの病院(いつ頃に受診・入院したか)
当然ですが、救急隊員の方々は、利用者の状態を普段から把握しているわけがないので、介護士の伝える情報で判断するしかありません。
テンパってしまうのは仕方がないのですが、正確に情報を伝えられるようにしておくのは、利用者の命を守るための義務です。
これまでに経験した救急搬送時の具体的な事例
深夜3時頃に、たん絡みの多い傾向のある80代男性利用者(要介護度5)の顔色が、血の気が引いたような状態で、サチュレーションを測ったところ、SpO2が70台まで低下していたことがありました。
SpO2の基本的な正常値は96%以上です。90%以下になったら結構ヤバイ(苦しい)と思ってもらっていい。
喀痰吸引を実施して90台まで上がってはきたものの、また80台、70台と数値が安定しない為、オンコールしながら「行きましょう」という結論にいたり、救急搬送対応としました。
すぐに救急車が駆けつけて救急隊員の方に「酸素はしてますか?」「COPDは?」という質問がありました。
ちなみに「COPDは?」って聞かれて、「え?C-3PO?スターウォーズですか?好きです」とか言ったら怒られますからね。
COPDってのは、慢性閉塞性肺疾患と呼ばれるものです。
主な症状としては、せき・たんが出たり、気管支が細くなることで呼吸が苦しくなります。
(主な原因はタバコ。喫煙者の15~20%がCOPDを発症する。)
その利用者に喫煙歴は無く、既往歴にもCOPDはありません。
そこから救急車に乗り込み、確認事項を質問されます。
この時に重要な情報は、利用者のかかりつけの病院です。
これが医院とか、クリニックレベルの情報しかないと、なかなか救急外来に受け入れてもらえないらしいのです。
さいわい家族連絡で確認が取れたので、受け入れ先の病院が決定し、病院へ向かいます。(それまで施設の駐車場で40~50分くらい足止め状態だった)
ひと段落して、病院へ向かう道中、さっきまで殺伐としていた救急隊員の方が、「大きい病院の受診歴がわからないと、なかなか受け入れてもらえないので、病院の把握は、お願いします」と、優しく教えてくれました。
この辺の利用者の情報整理に関しては、施設単位で把握していないと、いざというときに情報不足となってしまうのだなと感じました。
119番通報の対応を減らすために介護士ができること
夜勤中「なんか心配だな」って思ったら、どんどん先手を打つべきだと思います。
夜勤業務だと、どうしても1人で数十人単位の利用者を観察する必要があるので、他利用者の対応中に何かあっても目が行き届かないところは発生します。
それでも、申し送りで「たん絡みが多かったから今日は吸引の回数が多い」とか、それに伴って「食事をスキップした」とかっていう情報があれば、夜間帯もこまめに喀痰吸引を実施するとか。
転倒リスクの高い利用者が、ナースコールを押さないでトイレに行くタイプの人なら、巡視(ラウンド)を60分単位じゃなくて30分単位にしてみるとか。
事故を未然に防ぐ手立ては、こまめな対応しかありません。
それでも事故が起こってしまったのであれば、それはもう、防ぎようがない事故です。
介護士の責任の範疇じゃないです。
ただ自分の認識の甘さによって、なんらかの事故に繋がってしまったのであれば、利用者もその家族もツライですし。何より自分自身が情けない思いをすることになります。
したがって、利用者の不安要素に対して介護士ができることは、こまめな対応です。これしかない。
準備を制する夜勤介護士は救急搬送を制する
慣れないうちは、ある程度、頭の中でシュミレーションしておいた方がいいです。
っていうのも、練習もしないのに、いきなり実践できるわけがないからです。
準備が大事ってことですね。
- 救急搬送で付き添う時の持ち物
- AEDの扱い
- 利用者の情報が記載されている書類の場所
- 普段飲んでいる薬の場所
- 利用者の保険証(後日家族に持っていってもらうパターンもある)
このくらいは、オンコール対応の介護士だったら把握しておきたいところです。